UP PARTNERS

BLOG

代表ブログ
service

一番難しい「心の整理」

2025.11.17更新

先日、5日間ほど北海道の北東部を旅しました。野生のラッコ、シマリス、そして熊!に出会い、記憶に残る旅でした。ある経営本に、「引退後に楽しみを取っておくより、“あの時は楽しかった”と振り返る方が幸せだ」とありましたが、まさにその通りだと思っていまして、次はシャチとオオワシを見たいと思っています。笑

さて、50歳を過ぎると、同級生が集まった時の話題は「いつまで頑張るつもり?」といったもの。特に経営者の場合、「引退」は自分で決めるしかないです。長年、全力を尽くしてきた方ほど、「重圧からは解放されたいけど、会社は大丈夫なのか?」と不安になるのは当然のことと思います。けれども、これまで多くの経営者を見てきて思うのは、経営上手は引退上手ということでしょうか。

 
一番難しい「心の整理」

引退の準備というと、自社の株式(持分)の贈与や退職金、M&Aなど、金銭的な事を思い浮かべる方が多いと思います。例えば後継者と退職金や引退後の生活費の事で揉めるケースは少なからずあります。これは長期間、出来れば簿外で貯めておくのがベストです。もしご不安でしたら今すぐにでも401kや運用型の生命保険をご検討いただければと思います。

しかし、お金の事より難しいのは心の整理ではないでしょうか。
経験的に、若い世代では「FIRE(早期引退)」を志向する人が多いのですが、逆に70歳を超えた経営者は「生涯現役でいたい」と仰る方がとても多いのです。これは平成、昭和といった世代というより、人の普遍的な心理特性のように感じます。そういえば、早く教師を辞めたいと常日頃口にしていた母が、78歳の今、市の施設で古典を教えています。
結局、人は何かしら役割を持っていたいのだと思います。社会学でも役割期待といって、「人は期待された役割を果たそうとする」性質があり、逆に役割がないことには苦痛を感じるのだそうです。

 
後継者は「探す」より「育てる」

引退を難しくしているもう一つの要因が、後継者問題です。多くの経営者が「今は任せられる人がいない」と言います。
しかしご自身が経営者になった頃を思い返してみてください。今よりもずっと経営手腕は劣っていたはずです。翻って、年長者から見て完璧な後継者などは存在しないのだと思います。

また私見ですが、後継者は外部招聘より内部昇進の方が概ね上手くいきます。外部招聘は少なからず反発を招きます。それよりは親族か、スタッフの中から選定し、失敗を許容しながら判断力を養わせる…経営とは理屈よりも「決断の積み重ね」であり、それを養うには経験が必要です。ですから、「そろそろ引退を考えるか」と思った時が、実は育成のスタートラインかとも思います。

引退後こそが本当の人生?

多くの経営者が引退後に戸惑うのは、自由な時間の使い方だそうです。元トリンプの伝説的な経営者である吉越浩一郎氏は60歳を過ぎてからが本生(本当の人生)と仰っていて、ご婦人と旅行、ゴルフ、フランスとの二重生活、執筆、講演、若手経営者との会食など日々忙しくしておられます。また健康を保つためにジムワークを欠かしません。

そこまではなかなか困難だとしても、会社顧問として後進を支える、その道のコンサルタントとして知見を活かすなど、社会に貢献することは十分に可能でしょう。ある精神科の先生に言われました。「菅君、お年寄りに遠慮してはいけない。人助けと思って沢山頼み事をしなさい!」と。
経験を活かし、次の世代や地域に還元するそれが、経営者としての最後の仕事なのかもしれませんね。

 
自分を再構築する

引退は、退いて引きこもる事ではなく、自分自身の新しい人生を構築することではないかと最近は思います。人との関わり方や学び方次第で、人はいつまでも成長できます。実際、80歳を超えて税理士試験に合格された方もおられますし、私の母は74歳の時に社会保険労務士に合格しました。受験中は若い人と交流してとても楽しそうでしたし、今も時々会っているようです。
役者が他人の人生を演じるように、引退後は違う自分をプロデュースすると思えば、今から引退が楽しみでもあります。とりあえず、私も生きている間にやりたい事を30個くらい書き出すことから始めてみようかと思うこの頃です。