人事労務
2024.06.03
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
社会福祉法人の決算日は3月31日となります。決算で確定した計算書類等は会計年度終了後3ヶ月以内に所轄庁へ提出することとなっており、6月30日までに全ての手続きを終了しなければなりません。今回はこの流れとポイントをまとめます。
まずは予算です。直接決算とは関係ないのですが、次期事業年度予算については、「毎会計年度開始の日の前日までに、理事長が作成し、理事会の承認を受けなければならない」とされています。ですから、次年度の予算については3月31日までに理事会の承認を受けている必要があります。
次に決算ですが、まずは現金預金の残高の確認です。3月31日時点の手許現金残高が帳簿残高と一致しているか、預金残高証明書と帳簿残高が一致しているか確認します。次に未収金・未払金の残高が請求書と一致しているか確認します。これは4月5月の預金通帳や実際に支払った領収書で確認することをおすすめします。そして、仮払金・仮受金・預り金等の残高の確認です。これは日頃から残高を確認することが重要です。
忘れてはならないのが、固定資産の増減の確認です。期中の購入や処分によって、増減した固定資産がないか固定資産台帳との突合作業が必要です。その他、引当金等の計上を行います。
つまり、まずは貸借対照表の金額を確定すること、これがポイントです。貸借対照表の金額が確定すれば決算の数字はほぼ出揃います。
決算が確定すれば、あとは監事監査を受け、理事会の承認、2週間以上の間隔を空けて定時評議員会で承認を受けます。最後に承認を受けた計算書類等を所轄庁へ提出します。ここまでを6月30日までに行います。
理事長は自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならないので、その間隔が定款の規定上「毎会計年度に4月を超える間隔で2回以上」となっている場合は、6月と3月の理事会で職務の執行の状況を報告すれば大丈夫です。その際は議題という形ではなく、報告となります。決議の省略とは扱いが異なり、対面かオンライン等を使用した理事会の開催が必要となりますのでご注意ください。
税務
2024.05.16
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
昨年末に公表された国税庁の報道発表資料「令和4年事務年度における相続税の調査等の状況」によると、令和4年事務年度の相続税の調査件数は8196件で、前事務年度から1879件の増加で、伸び率は29.7%、約3割増加していました。
この調査件数8196件の内、非違件数は7036件で、非違割合は85.8%、税務調査を行ったほとんどの案件で申告漏れが指摘されていたことになります。ちなみに、申告漏れ課税価格は前事務年度から400億円増の2630億円となっていました。
相続税の調査に至る経緯は、死亡届が住所地の市区町村へ提出されると、そこから所轄の税務署へ死亡の事実が通知されます。その際に亡くなった方が所有していた固定資産や住民税の課税所得等の情報も併せて通知されます。これを受けて所轄の税務署は、亡くなった方の生前の申告状況や納付状況、金融機関からの支払調書など、税務署が把握している亡くなった方の財産状況等と照らし合わせて、税務調査の必要性の有無を判断しています。全国の国税局と税務署はネットワークで結ばれており、納税者の財産や納税の記録を一元管理しています。
個人事業主であれば所得税の申告状況、法人の経営者であれば法人税の申告状況、財産債務調書、各種法定調書など、把握している情報を様々な角度から検証し、実地調査の前に入念に事前調査をしています。一般的には相続税の申告後、1年から1年半後くらいに、税務調査の事前通知がくる傾向にあります。絶対では無いですが、申告後3年経過しても、事前通知が無い場合は、調査の対象とはならなかったと捉えています。
調査対象に選定され、いざ実地調査が行われる際には、調査官はどこを見ているのでしょうか。法人税、所得税の調査も同様ですが、実地調査開始時に、まずは納税者の概況の聞き取りが行われます。亡くなった方の生前の趣味や、ライフスタイル、死亡原因、職歴、出生地、親族関係など、世間話をしながら聞き取りが行われます。
調査対象に選定したということは、何かしらの相続財産の申告が漏れているのではないか?ということで来ているので、この様な世間話から、事前調査の内容と実態のすり合わせを行っているのです。また、調査官は納税者の自宅、室内も隈なく見ています。例えば、室内のカレンダーに証券会社名や、保険会社名が入っていたら、上場株式等の申告はあったかどうか、該当する保険会社の保険の申告があったかどうかなどをチェックしています。事前に所得状況をある程度把握しているので、それに見合ったライフスタイルなのかどうか世間話や自宅の状況等を見て、申告された課税財産と実態が見合っているのかを見ているのです。
相続財産の申告漏れで最も多いのは「現預金」で、全体の約3割を占めています。その中でも調査官は、名義人と実際の所有者が異なる、「名義預金」の有無を重視しています。お孫さんの将来の為にと、お孫さん名義の通帳を作成し貯金する。しかし、通帳、印鑑等の管理は亡くなった方であれば、それは名義預金と見なされ、相続財産となります。この様にならないためには、お孫さんまたは親へ通帳、印鑑を渡す、贈与契約書を作成する、必要な場合は贈与税の申告をする必要があります。
令和6年1月から相続財産に持ち戻される生前贈与の持ち戻し期間が最大7年に延長されました。これまで以上に、名義預金、贈与に対するチェックの目は厳しくなるものと思われます。今後の相続税申告の際に参考にしていただけたら幸いです。
人事労務
2024.05.02
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
年度末は、大手企業の賃上げに関する報道を見聞きする機会が多いですが、中小企業の動向はどのようになっているでしょうか。
ある民間調査会社の調べによると、2024年度にいわゆる「賃金改善」(定期昇給とは別にベースアップ等を行うこと)を予定している企業は、有:60%・無:14%・未定:26% となっています。
また、企業規模別でみても、「大企業」「中小企業」「小規模企業」の3規模すべてで、前年度よりも賃金改善見込みの割合が上昇しており、従業員数別が「6 ~20人」「21~50人」「51~100 人」「101~300 人」の層でも6割を超えています。
「5人以下」では賃金改善を行う割合が低くなっているものの、4割台に達しています。
賃金改善を実施する理由は、人手不足などによる「労働力の定着・確保」が約75%と最も高く、その他の理由としては、「従業員の生活を支えるため・物価動向」「採用力の強化・同業他社の賃金動向」などが挙げられています。
採用面で考えてみると、地場の大手地銀が大幅な初任給引き上げを行うなど、賃上げ基調が強くなっており、自社の採用競争力と経営面のバランスに苦慮する企業も多いかと思います。
賃金改善を検討するにあたっては、まず自社の給与水準が地域の同業他社と比較してどのラインにあるのかを把握することが必要かと思います。
その上で、賃金改善を行う必要があると判断した場合に、どの程度の引き上げを行うのか検討することになりますが、賃金改善等を実施する予定の企業における総人件費(月給及び賞与)の増加見込みは、中央値で3%ほどと言われています。
中小企業の実態を見ている肌感覚から申し上げると、月給のベースアップを検討するのであれば、財務上のバランスを考慮した上で1.5~3%を目安として検討してはいかがかと考えます。また、求人の初任給をアップさせた場合には、在職している従業員のベースアップを行う必要がありますが、どの職位までアップさせるのか、職位ごとにアップ額を変えるのか等を考えていく必要があります。
中小企業においては、中途採用のウエイトが大きい傾向にありますが、転職マーケットの2024年2月の求人倍率は2.67倍(前年同月差+0.5以上)であり、求人数のほうが転職希望者数より大きく増加し、転職求人倍率は上昇すると推測されています。
転職希望者のニーズは様々ですが、「収入増」・「ワークライフバランスの確保」・「スキルアップ」が主なものとして考えられます。採用競合と自社の労働環境を比較し、優れていると思われる部分については、自社HPや採用サイトでアピールポイントとして数値を用いるなど具体的に訴求することが効果的です。
「採用と定着」は、重要度が高まっている経営課題かと思います。賃金改善や採用等についてご相談やご質問がありましたら、お気軽に弊社スタッフへお声掛けください。
税務
2024.04.16
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
税務手続きに関し2024年1月から変更になったことがあります。それは、「電子取引」のデータ保存義務化です。「電子取引」とは電子上で書類のやり取りをした場合のことをいい、web明細やメールによる請求書等の添付、ECサイトで購入した領収書がweb上にある場合などが該当します。
国はデジタル化を推進しており、データで請求書等を受領したのに印刷して紙で保存するのはデジタル化に逆行します。そのような背景から電子取引はデータのまま保存することが義務付けられています。
また、保存をする際には「税務調査の際にデータのダウンロードに応じる」「改ざん防止措置」や「検索要件」など複数の要件を満たした上で保存する必要があります。
実はこの電子取引のデータ保存義務化は2022年1月から実施されています。ところが時期尚早との声が実務界から上がり、事実上2年間延期されました。そして2024年1月から義務化が再スタートしたわけですが、電子保存の対応が難しいとの声が引き続きあったため、結局期限のない「宥恕(ゆうじょ)規定」が置かれることになりました。
宥恕規定によると「改ざん防止措置」や「検索要件」など厳しい要件は不要になり、「税務調査の際にデータのダウンロードに応じる」の要件さえ満たせば従来どおり紙で保存ができるようになりました。
また、宥恕規定を使うためには「税務署が相当な理由があると認める」という要件が必要になるのですが、これは「システム導入が間に合わない」、「ワークフローの整備が間に合わない」という理由が通じるので、事実上中小企業なら誰でも使える規定になっています。多くの中小企業はこの宥恕規定を用いて電子保存義務に対応することになるでしょう。
では実務上どのように対応すれば良いか、典型例としてECサイトでの購入のケースで見ていきましょう。
回答:ECサイト上で領収書等データの確認が随時可能である場合には、領収書等データをダウンロードして保存しなくても良い。ただし、①ECサイト上で検索要件を満たしているか、②税法上の保存期間を満たしているか、がポイントになる。
対応B(原則)
ECサイトで検索要件等を満たしている場合には、ECサイト上のまま保存で良い。
対応C(宥恕規定)
書面保存している場合には検索要件が不要なので、印刷の上ECサイト上で保存すれば良い。
※保存期間注意 対応Cの宥恕規定を使う場合には保存期間が問題なければ、今まで通り紙保存で良いということになる。
ECサイトの場合には、サイト上でいつでもダウンロードできる状態であれば、PDF等にダウンロードして保存することが不要になりました。また本来は検索要件等が必要なのですが、宥恕規定を使う場合には検索要件等も不要になります。税務調査が来たら、ECサイトからダウンロードすれば要件を満たします。従って、ポイントは「保存期間」のみになります。
法人税法の場合には7年間書類の保存が義務付けられているため、サイト上で7年間遡ることができれば、今まで通り紙に印刷すれば何も対応する必要がないということになります。このように宥恕規定により制度がかなり緩和されておりますので、各社の状況に応じて義務化された電子取引の対応を進めましょう。
経営ブログ
2024.04.02
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
近年予防診療が拡大され、自由診療を選択する患者さんが増えてきました。保険診療と保険外診療(自由診療)の境界線を理解することで、ルールを順守しつつ、同時に実施できることもあります。これから紹介する情報が見直しのきっかけになれば幸いです。
※混合診療が認められている「評価療養」「選定療養」を除いた情報です。
混合診療とは、一連の治療の中で保険診療と自由診療を組み合わせて、医療サービスを提供することです。わかりやすくまとめている東京都医師会のHPから保険外治療、そして厚労省の指導事例からNG例をご紹介いたします。
保険外診療(指導事例を一部抜粋)
NG例
患者さんの意識が高まるとより良い治療を求める方が増加します。
混合診療の定義を順守すると随時必要な医療の提供が出来ますので、詳細は下記からご覧ください。
東京都医師会 混合診療(健康診断・予防接種・自費医療など)
※字数の関係で一部をご紹介しています。見直し前にはルールをよくご確認ください。
※厚労省は混合診療を助長することはできませんので、HPや事例をご紹介しました。
税務
2024.03.18
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
令和5年12月に発表された「令和6年度税制改正大綱」で賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を軽減するため、所得税・住民税の定額減税が実施されることになりました。今回はその内容や具体的な実施方法について解説していきます。
「令和6年度税制改正大綱」では、まず、物価上昇を上回る賃金上昇の実現を最優先の課題としています。
そこで、岸田内閣は所得税・個人住民税の「定額減税」を実施することで、賃金上昇と相まって、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状況をつくることにしました。
その方法は、個人の口座に振り込まれる給付金ではなく、給与や公的年金から控除される源泉所得税等から定額を「減税する」という方法で、国民への「減税しましたよ感」をアピールするものになりました。
定額減税の額(ここでは所得税のみご説明します)
1. 納税者本人(居住者のみ):30,000円
2. 同一生計配偶者または扶養親族(居住者のみ):1人につき30,000 円
となっており、配偶者及び扶養親族はその年の合計所得金額が48万円以下でかつ同一生計であるものに限られます。
さらに、納税者本人については所得制限が課されていて、令和6年度の合計所得金額が1,805万円以下であることとされています。
※給与所得者の年収ベースで2,000万円以下
給与所得
①2024年(令和6年)の6月1日以後最初に支払いを受ける給与・賞与の源泉所得税から控除する
②控除しきれない場合には、2024年(令和6年)7月以後の給与・賞与(同年最後支払いを除く)の源泉所得税額から順次控除する
③最終的には年末調整で控除する
公的年金等
①2024年(令和6年)の6月1日以後最初に支払いを受ける年金の源泉所得税から控除する
②控除しきれない場合には、2024年(令和6年)8月以後に支払いを受ける年金の源泉所得税額から順次控除する
事業所得
①第1期(原則2024年7月)の予定納税額から控除する
②控除しきれない場合には、第2期(2024年11月)の予定納税額から控除する
③最終的には確定申告で調整する
納税者にとって、減税はうれしいものです。しかし、この定額減税は1回のみの実施ですし、給与支払者が減税額を計算するという手間とコストをかけなければなりません。6月から始まる予定ですので、少しずつ経理事務の方法等が明らかになってきています。
私達も情報をより早くキャッチしてお伝えしていきます。
税務
2024.03.04
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
2024年度診療報酬改定は本体部分がプラス0.88%と発表されました。診療報酬本体は2008年度以降、9回連続プラス改定となります。なお、薬価はマイナス1%の改定となっています。
まず、診療報酬改定の概要について説明します。
①基本的な改定分 +0.46%
各科改定率 医科 +0.52%
歯科 +0.57%
調剤 +0.16%
40歳未満の勤務医師、勤務歯科医師、薬局の勤務薬剤師、事務員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置分(+0.28程度)は0.46%に含む。
②看護師、病院薬剤師その他医療関係職種(①を除く)について、継続的な給与アップの対応分 +0.61%
③入院時の食費基準額の引き上げ(1食当たり30円)の対応分 +0.06%
④生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化分 ▲0.25%
このように、オレンジ下線部分の数字の合計が+0.88%となっています。しかし、賃上げ措置分とベースアップ対応分を考えると、実質マイナス改定になっております。
また、従来の診療報酬改定は4月1日より施行となっていましたが、2024年度の改定は2ヶ月後ろ倒しとなる6月1日からの施行となります。背景には告知から施行までの期間に余裕を持たせることで改定内容の周知、システムのスムーズな移行が期待されています。
次に薬価のマイナス改定についてです。薬価は全体で▲0.97%、材料価格は全体で▲0.02%の価格引き下げとなります。この改定は2024年4月1日より施行となります。(材料価格は2024年6月1日施行)
深刻な薬不足が続いているなか、この下落により、医療費1200億円を削減できるそうです。
今回の診療報酬改定で柱となっている働き方改革、医療DX等を推進していく必要があると感じます。お困りの際は弊社へご相談ください。
税務
2024.02.16
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
「交際費がいくらまで経費で落ちるのか」が話題に上がったことはないでしょうか。今回は税務上の交際費についてまとめたいと思います。
法人税法上交際費等とは「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類するもの」を言います。
税法上は別段の定め(会計と異なる特別なルール)が規定されており、原則損金不算入とされています。その上で一定の要件で計算した金額を例外的に損金算入するという措置が設けられています。
計算書類の添付が漏れると全額損金不算入となってしまうため、実は怖い制度です。
大多数の中小企業が該当する資本金1億円以下の法人は、
①交際費等の額が800万円に達するまでの金額
②接待飲食費の50%に相当する金額
を計算しいずれか大きい金額が損金算入されるというルールになっています。
この800万円の枠は事業規模にかかわらず1法人ごとですので、規模が大きく接待飲食費が多額の法人では800万円でなく接待飲食費の50%を計算した方が有利となる場合があります。利益がでている場合には事業の分割や管理法人の設立を検討することも有効です。
資本金1億円超の法人は、800万円の枠がなく②接待飲食費の50%に相当する金額のみが損金算入限度額となり、交際費の範囲が狭まります。接待飲食費の50%ですので、ゴルフプレー代や贈答品は含まず、更に社内飲食費(役員だけの懇親等)も除外されます。
また、注意すべきは医療法人等の出資を有しない法人です。資本金がないため「(期末総資産 – 総負債 – 当期利益)×60%」で計算した金額を資本金とみなすルールとなっており、繰越利益が1億6千万円をやや超えたあたりで交際費の幅が一気に狭まってしまいます。
今期わずかに超えてしまうような場合は、後1年遅らせることができないか利益対策を検討してください。
令和6年度税制改正により、一人当たり10,000円以下の飲食費等については交際費等から除外して損金算入されることになりました。(5,000円から10,000円に拡充)
10,000円以下の飲食費を経理上「会議費」等の科目で交際費等と区別することで交際費等の枠を有効に使うことができます。
令和6年4月1日以後の支出から適用となりますので、事業年度をまたぐ場合には経理処理に注意が必要です。
個人は経費の考え方が法人と異なり「事業と直接の関連をもち、事業の遂行上必要な費用」が経費とされます。一見個人の方が要件が容易に感じますが、判例上交際費の「事業と直接の関連」の証明はかなり難易度が高く、この論点で税務署と争うことは困難を極めます。対策としては、同業他社比率を参考にする、事前に経費の自己否認をする、法人成りを検討する、等が考えられます。
交際費1つとっても自社のポジションによって有効な対策は異なりますので、些細なことから何なりと税務担当者にご相談ください。
税務
2024.01.05
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
一般的に社会福祉法人は収益事業を行わない限り、法人税の納税義務はありません。しかし、源泉所得税に関しては納税義務が発生します。この源泉所得税については社会福祉法人にも税務調査が入る可能性があります。
人を雇って給与を支払ったり、税理士、弁護士、司法書士などに報酬を支払ったりする場合には、その支払いの都度支払金額に応じた所得税及び復興特別所得税を差し引くことになっています。
そして、差し引いた所得税及び復興特別所得税は、原則として、給与等を実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。これを源泉所得税の徴収・納税義務と言います。
調査ではこの源泉所得税がきちんと計算され徴収・納税されているかを調べられます。
ポイントはいくつかありますが、まずは理事会、評議員会の際に支払われる役員報酬について調べられます。理事、監事、評議員に支払う報酬からもきちんと源泉所得税を徴収しなければいけません。徴収する税額は「源泉徴収税額表」の日額表の乙欄に記載されている金額になります。役員報酬規程等で支払う報酬の金額が決められていると思いますので、規程の確認も必要になります。
次に個人の嘱託医に支払う報酬です。毎月報酬を支払っている場合は「源泉徴収税額表」の月額表の乙欄に記載されている金額を徴収してください。報酬・料金等の支払いとして10.21%の税率を徴収するのは誤りです。非常勤職員給与として源泉所得税を徴収しますので、年末には嘱託医へ源泉徴収票を交付する必要があります。
中途入社の職員がいる場合にはその方の必要書類も調べられます。年の中途入社で前職があるにも関わらず、前職の源泉徴収票を提出しない場合は年末調整を行うことができませんので、年末調整をするのは誤りです。前職がある方には必ず源泉徴収票の提出を求めるようにしましょう。
また、年末調整の時に必要な「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は非常に重要な書類ですので、入社時に前職の源泉徴収票や他の必要書類と共に提出してもらうことをおすすめします。
社会福祉法人には税金がかからない。という認識は誤りではありませんが、全く税に対して関わりが無いという訳ではありません。特に理事会や評議員会の報酬などは社会福祉法人によく出てくる費用ですので、きちんと理解をして納税をする必要があります。
今回取り上げた事柄が調査のポイントの全てではありませんが、いざという時に困らないように定款や規程の確認も含めて、きちんと源泉所得税が計算され、納税されているか調べてみてはいかがでしょうか。
相続
2023.12.18
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
既報の通り令和6年以降の贈与については、相続への持ち戻し加算期間が3年→7年に延長されます。これは贈与税の原則についての規定ですが、贈与には他にも様々な特例があり、その中には相続に影響を与えるものも少なくありません。
そこで今回は、贈与が相続税に与える影響をまとめました。財産をあげる方を父母、もらう方を子としています。
子ごとに年110万円の基礎控除まで非課税。最大7年分が非課税分も含めて相続で加算。ただし、この加算は相続時に財産を取得した方に限定されるため、例え子であっても財産を一切取得しないのであれば加算はない。
子ごとに最大1,000万円まで非課税。相続での加算なし。(令和5年12月31日までの特例)※延長の可能性有り
30歳未満の子ごとに1,500万円まで非課税。既に教育費に充てた分は相続での加算なし。残額については、子が30歳に達した時点で贈与税課税。他方父母に相続が発生した場合①相続税の課税価格が5億円超の場合は全て相続で加算、一方②5億円以下の場合で、子が23歳未満である、あるいは学校などに通っている場合などは加算なし。(令和8年3月31日までの特例)
18歳以上50歳未満の子ごとに1,000万円まで非課税。利用した分は相続での加算なし。残額については、孫が50歳に達した時点で贈与税課税。他方父母に相続が発生した場合、残額は全て相続で加算。(令和7年3月31日までの特例)
2,000万円まで非課税。相続での加算なし。20年以上の夫婦間で、居住用不動産あるいは居住用不動産取得のための金銭贈与が対象。※期限の定めなし
18歳以上の後継者に対する贈与税が全額猶予。対象は自社株式のみ。猶予された税額は先代の相続の際に免除されるが、贈与時の株価が相続で加算。相続の際に引き続き猶予を受けることが可能。相続で猶予された税額は、後継者死亡時に免除。
(一般措置は期限の定めはなし)(特例措置は令和9年12月末まで)
父母ごとに2,500万円の非課税枠があり、父母ともに贈与すれば合計5,000万円まで非課税。ただし、すべて贈与時の価額を相続で加算。これとは別枠で、令和6年以降は子ごとに年110万円の基礎控除が新設。
※①と違いこの基礎控除は相続での加算はない。また※①とは共存できるので、父からは※②、母からは※①で贈与を受けたとすると、子ごとに年220万円までは非課税で贈与可能。
注意点は※①と※②は選択制で不可逆ということ。一度父から子の贈与について※②を選択すると、父からの贈与については※①には戻れない。その場合でも「3.住宅取得資金贈与の特例」「4.教育資金贈与」「5.結婚・子育て資金贈与」の特例は選択可能。また母からの分は依然として※①での贈与が可能。
不明点がございましたら遠慮なくお問い合わせください。
税務
2023.12.04
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
令和5年10月1日から消費税のインボイス制度が始まりました。金融機関が取り扱う商品やサービスでインボイスの対象となるものの代表例は各種手数料です。
金融機関に支払う手数料は消費税の課税対象となるため、金融機関は手数料と合わせて10%の消費税を受け取る代わりに、お客様が消費税の仕入税額控除を受けることができるように、インボイスの交付を行います。
金融機関窓口での各種手数料取引の例は、振込手数料、口座振替手数料、給与振込手数料、自動送金サービスの振込手数料、残高証明書発行手数料、貸金庫利用料などになります。
また、法人インターネットバンキングの振込手数料についても、消費税の課税対象となりますので、インボイスの交付が行われます。しかし、同じ振込手数料でも ATM の振込手数料や両替機利用手数料についてはインボイスの交付は行われません。
基本的に3万円未満となる ATM の振込手数料や両替機の利用手数料については、インボイスの交付が不要な「3万円未満の自動販売機、自動サービス機における取引」に該当し、インボイスの交付義務が免除されています。
(※ATM や両替機から出力される「ご利用明細」等についてはインボイス交付の対象にはなっておりません)
そのため、ATM や両替機を利用した場合はインボイスを保存する代わりに、金融機関の場所等、一定事項を記載した帳簿を保存することで仕入税額控除を受けることができるようになっています。
その他、預金口座から口座振替されている各種手数料については、手数料取引明細を電子交付したり、書面で郵送したりするなど、取り扱いが金融機関で異なりますので、確認が必要になります。
また、金融機関取引に限ることではありませんが、万が一、交付を受けたインボイスに誤りがある場合には、インボイスの発行者に確認して修正を依頼しなければなりません。
国税庁公表の FAQ ではインボイスの修正方法として2種類が記されています。
①誤りがあった事項を記載して交付する方法
②当初交付したものとの関連性を明らかにし、修正した事項を明示して交付する方法
すなわち、①は当初交付したインボイスを差し替える方法で②は修正箇所だけを差し替える旨を記載する方法になります。
原則はインボイスの交付を受けたお客様が誤ったインボイスを勝手に追記・修正してはいけませんので注意して下さい。
インボイス制度開始に伴い、各金融機関は適格請求書発行事業者として登録を受けていて、お客様に対して金融機関のインボイス登録番号やインボイス制度に関する対応についてホームページや書面等でその対応内容を公表していますので、必要であればご確認下さい。
税務
2023.11.16
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
「インボイス制度」が10月から始まり、来年1月から電子帳簿保存法が2年間の宥恕期間を経て本格始動します。その対応に苦慮している中でも待ってくれない年末調整。この期間をスムーズに乗り越えるため、令和4年からの変更点をお知らせします。
令和4年1月1日以降取得分より「住宅借入金等控除限度額」「控除率」「控除期間」が変更になります。令和4年中に居住の方は、一年目は確定申告となるため、今回の年末調整より対象となります。事前に新居を購入した従業員などをリストアップしておくことをおすすめします。また、新築住宅と中古住宅とでは「控除限度額」「控除期間」が異なりますのでご注意ください。
扶養控除の対象となる扶養親族の範囲「16歳以上の非居住者」のうち「30歳から69歳までの非居住者」については、下記に該当する場合のみ扶養親族の対象となります。
①留学により国内に住所及び居所を有しなくなった者
②障害者
③その居住者からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を 38 万円以上受けている者
扶養控除を受ける場合は確認書類の添付が必要となります。早めに従業員に案内するようにしましょう。
この欄は配偶者や扶養親族に退職所得がある場合に記入が必要となります。記入をしないと適用漏れになる可能性がありますので、該当する方には案内をしてください。
年末調整は事前準備が作業速度に大きく関わります。早くから変更内容をしっかり把握して、事前案内を行い、この慌ただしくも大切な時期を乗り切っていきましょう!