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社会福祉法人の区分経理

2025.09.17更新

こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。

 

1.はじめに

社会福祉法人会計の根幹をなす制度に「区分経理」があります。
これは、法人が行う事業を「社会福祉事業」「公益事業」「収益事業」の3つに区分し、それぞれを独立した会計単位として経理するものです。社会福祉法および会計基準で義務付けられており、法人の透明性を確保し、健全な運営を促す上で極めて重要な役割を担います。
今回は、区分経理の目的や税制面での重要な制度についてお話しします。

 

2.区分経理の必要性

社会福祉法人は補助金や寄付金、税制優遇といった公的な支援を受けているため、その財産が主たる目的である社会福祉事業のために適正に利用されていることを外部に説明する責任があります。もし会計が一体化されていると、例えば収益事業で得た利益が本来事業に適切に充当されているか、あるいは本来事業の財産が他に流用されていないかといった点の確認が困難になります。
区分経理は、事業ごとの資金の流れを可視化し、財産の使途を明確にすることが最大の目的です。

会計区分は以下の3つです。
1.社会福祉事業:法人本来の事業
2.公益事業  :社会福祉事業以外の公益事業
3.収益事業  :上記2事業の財源を確保するために行う事業

このうち収益事業には重要なルールがあります。
まず、得られた利益は必ず社会福祉事業または公益事業の経費に充てなければならず、役員への賞与といった剰余金の分配は一切認められません。また、収益事業はあくまで本来事業の「従たる事業」であり、規模が本来事業を上回ることや、運営に支障をきたすことは許されません。

区分経理の実務では、法人本部の管理部門人件費や家賃といった複数の事業にまたがる共通経費を、職員数や面積など合理的な基準で各事業に按分計算する必要があります。また、収益事業から本来事業への資金移動は「内部取引」として明確に記録します。

 

3.みなし寄付金制度

さらに、税制面で重要なのが「みなし寄付金」制度です。
社会福祉法人は原則非課税ですが、収益事業で得た所得は課税対象となります。しかし、その利益を本来事業のために支出(資金移動)すると、その額を税法上の「寄付金」とみなし、収益事業の経費(損金)として扱うことができます。
これにより、収益事業の課税所得が圧縮され、税負担が軽減されるのです。

この制度の適用には、
1.区分経理が正確に行われていること
2.実際に資金が移動していること
が前提となります。

しかし、収益事業から本来事業へ支出した全額が、必ずしも損金として認められるわけではなく、上限(損金算入限度額)が定められています。
社会福祉法人の場合、みなし寄付金の損金算入限度額は、
寄付金を支出する前の収益事業の所得金額×50%
200 万円
のいずれか大きい方の金額となります。

 

4.さいごに

このように、「区分経理」という会計の土台の上で「収益事業」を行い、そこで得た利益を「みなし寄付金」制度で効率的に本来事業へ還元する、という一連の仕組みを活用することで、社会福祉法人の安定した運営を行うことが出来ると思います。


Hiroshi Sato(副支社長)

主な担当先の業種: 福祉/介護/飲食/製造/卸・小売
得意な分野: 一般税務/創業支援

税理士法人アップパートナーズ
佐賀中央オフィス