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2025.07.02更新
こんにちは。
福岡・佐賀・長崎の税理士法人グループ アップパートナーズです。
令和5年度税制改正により、令和7年分から「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」、通称“ミニマムタックス”が導入されます。これは、高額な資産を売却して得た利益に対し、一定の税負担を最低限求める新制度です。
近年、不動産や自社株を売却して巨額の所得を得る富裕層が、15%前後の低い税率(分離課税)で済んでしまうケースが問題視されていました。一方で、給与所得者には最大45%の累進課税が適用されており、「税の逆転現象」が生じていたのです。
この制度では、年間の所得が3億3,000万円を超える方を対象に、所得税の実効税率が22.5%未満である場合、その差額分を追加で納税する仕組みです。つまり、「一定の所得がある人は、最低でも22.5%の所得税の税率を負担してください」という制度になります。(住民税は別途)
次のような計算で、追加納税が必要かどうかを判断します。
①(基準所得金額 (※1)–3.3億円)×22.5%>②基準所得税額 (※2)
追加で発生する所得税額:①と②の差額に相当する額
※1 基準所得金額とは?
申告不要制度を適用せずに計算した合計所得金額です。つまり、土地建物の譲渡所得や上場株式や非上場株式の譲渡所得、給与・事業所得、 その他の各種所得に申告不要制度を適用できる株式の譲渡所得なども合算した金額が基準所得金額となります。(NISA等の非課税分は除く)
※2 基準所得税額とは?
その所得に通常通り課された所得税額のことです。(外国税額控除など除く)
例えば事業承継等で自社株や不動産を売却した場合、どうなるか具体例で見てみましょう。
ケース1:売却益5億円の場合
①ミニタックス適用前 5億円×15%=7,500万円
②ミニタックス適用後 (5億-3.3億)×22.5%=約3,825万円
①>②となるため、対象外(追加納税なし)
ケース2:売却益10億円の場合
③ミニタックス適用前 10億円×15%=1億5,000万円
④ミニタックス適用後 (10億-3.3億)×22.5%=1億5,075万円
③<④となるためその差額75万円を追加で納税する必要あり
ケース3:売却益20億円の場合
⑤ミニタックス適用前 20億円×15%=3億円
⑥ミニタックス適用後 (20億-3.3億)×22.5%=3億7,575万円
⑤<⑥となるためその差額7,575万円を追加で納税する必要あり
この制度の影響を受けるのは、概ね次のような方です。
◎相続やM&Aで不動産や自社株を10億円以上で売却した方
◎上場株の譲渡や配当が集中した富裕層(源泉徴収ありの特定口座も対象)
ミニマムタックスの対象となるのは主に超富裕層となります。
ただし、例えば相続によって取得した株式を現金化するなどして高額な利益が出た場合などは思わぬ課税が生じる可能性がありますので注意が必要です。
Yoko Toyohuku
税理士法人アップパートナーズ
福岡天神オフィス