【事業承継・相続】

自社株式の後継者集中対策

2009/06/03

 今回は、早期の事業承継対策を支援する"遺留分に関する民法の特例"について、具体例を挙げてお話をさせていただきます。
 一郎さん(長男)は、父の太郎さんから、5年前に自社株式の生前贈与〔当時の評価額1000万円〕を受けて経営を承継しました。その後、会社は、地元では一目置かれるほどの中小企業に発展しました。太郎さんは、会社を勇退し、悠々自適に暮らしていましたが、ひと月前に亡くなっています。

太郎(父)  → 5年前に社長を勇退。そのとき、一郎(長男)に自社株式1000万円(当時の評価額)を贈与。

一郎(長男)→ 5年前に太郎(父)から社長を引き継いだ。一郎のがんばりで、自社株式の評価額は現在5000万円になっている。

 太郎さんは、1億円の財産のうち、「妻の花子へ3000万円、(経営を継いだ)長男の一郎へ5500万円、(別の会社で働いている)次男の次郎に1500万円を渡す」と遺言書を残していました。ところが、法律に詳しい次郎さんは、民法に定める"遺留分"を根拠に、自分たちの相続財産が少ないと主張してきました。(相続人は花子さん・一郎さん・次郎さんの三人です。)

●次郎(次男)の主張
①民法では、遺言書によっても侵害されない、相続人が取得することを保証された"遺留分"が規定されている!(相続人が配偶者と子の場合、法定相続分の2分の1)
②一郎は、5年前に父(太郎)が経営していた会社の株式の生前贈与を受けている。これは〈特別受益〉となり、相続の何年前になされたものであっても"遺留分"を計算するための基礎財産に算入される。
※しかも、贈与時点の評価額である1000万円ではなく、現在の評価額である5000万円を基礎財産に加える。


【遺留分の計算】
計算の根拠となる財産(基礎財産)→ 1億5000万円
遺言書記載の財産1億円 プラス 一郎さんが生前贈与を受けた株式5000万円(贈与時点ではなく相続開始時点の評価で算入される)
●花子さん(妻)の遺留分 基礎財産の1/4
1億5000万円×法定相続分1/2×遺留分割合1/2 = 3750万円
●次郎さん(次男)の遺留分 基礎財産の1/8
1億5000万円×法定相続分1/4×遺留分割合1/2 = 1875万円


 一郎さんが経営者としてがんばったおかげで自社株式の評価が高まったのに、そのことが、経営に関係していない相続人の取り分(遺留分)まで大きくしてしまうという事態になっています。
 このような不公平が生じないように、今年3月1日に施行された民法の特例により、経営者から後継者に生前贈与された自社株式について、遺留分を計算するための基礎財産から除外することができるようになりました。これには、後継者を含む、現経営者の推定相続人全員の合意が必要です。また、同じく合意があれば、自社株式の評価額を、その合意時点の価額に固定することもできます。

 このケースの場合、生前贈与された自社株式を基礎財産から除外する合意をしていれば、遺留分は、花子さんが1億円の1/4の2500万円、次郎さんが1/8の1250万円と、遺言書の相続財産でカバーできていたことになります。(株式評価額1000万円の頃に価額固定の合意をしても同様です。)
 この民法の特例は、後継者をきちんと決めて自社株式の生前贈与などの対策を実行している、早期の事業承継対策を支援するものといえます。「万が一」が起こってからではもう遅いのです。現経営者を交えて後継者以外の方とも早めに話し合い、「先手を取る事業承継対策」を、弊社と一緒に実行していきましょう!

長崎オフィス 経営サポートグループ 荒木貴光


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